Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme

Aozora Bunko

「なにッ。まことか! みなまことの事かッ」

「まことの事に相違ござりませぬ。わたしの念日様が嘘を言う気づかいござりませぬゆえ、本当のことに相違ござりませぬ」

「売僧めッ、よくも化かしおッたなッ。道理で必死とあの女を庇いおッたわッ。スリを手先に飼いおる悪僧が衆生済度もすさまじかろうぞ。どうやら向う傷が夜鳴きして参ったようじゃわい。案内召されよ」

事ここに至らばもう容赦するところはない。篠崎流軍学の必要もない。院代玄長にかかる横道不埒のかくされたる悪業があるとすれば、五万石が百万石の寺格を楯にとって、俗人不犯詮議無用の強弁を奮おうと、傷が許さないのだ。あの眉間傷が許さないのです。――ずかずか引返して行くと、床しい美しい尼姿の恋娘をうしろへ随えながら、黙ってずいと行学院の大玄関を構わずに奥へ通りました。

「あの、なりませぬ! なりませぬ! どのようなお方もいつ切通してならぬとの御院代様御言いつけにござりますゆえ、お通し申すことなりませぬ」

「………」

駈け出して小賢しげに納所坊主両三名が遮ったのを、黙々自若として、ずいとさしつけたのは夜鳴きして参ったと言った眉間三寸、三日月形のあの冴えやかな向う傷です。