Japanische Klassiker mit Furigana
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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme
旗本退屈男
一
一
――第七話です
三十五反の帆を張りあげて行く仙台石の巻とは、必ずしも唄空事の誇張ではない。ここはその磯節にまでも歌詞滑らかに豪勢さを謳われた、関東百三十八大名の旗頭、奥羽五十四郡をわが庭に、今ぞ栄華威勢を世に誇る仙台伊達の青葉城下です。出船入り船帆影も繁き石の巻からそのお城下までへは、陸前浜街道を一本道に原ノ町口へ抜けて丁度十三里――まさかと思ったのに、およそ退屈男程気まぐれな風来坊も稀でした。身延から江尻の港へふらふらと降りて見たところ、三十五反の真帆張りあげた奥地通いの千石船が、ギイギイと帆綱を渚の風に鳴らしていたので、つい何とはなしに乗ったのが持病の退屈払い。石の巻に来て見るとこれがまた、そぞろ旅情もわびしく、なかなかにわるくないのです。ないところから、のっしのっしと浜街道を十三里ひと日にのし切って、群なす旅人の影に交りながら、ふらりふらりとお城下目ざして原ノ町口に姿を現しました。
陸奥路は丁度夏草盛り。
しかし陸奥ゆえに、夏草の上を掠めて夕陽を縫いながら吹き渡る風には、すでに荒涼として秋の心がありました。――背に吹くや五十四郡の秋の風、と、のちの人に詠まれた、その秋の風です。