Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme

Aozora Bunko

「なんじゃ、きつい用事を申しつくるつもりじゃな。では、この兄にその方をつれて参るよう、恋の使いをせよと言うのじゃな」

「ま! そのような冗談めかしい事ではござりませぬ。いつもきっと五ツ頃から四ツ頃迄にお越し遊ばしますのに、どうしたことか今宵ばかりはお見えがございませなんだゆえ、打ち案じておりましたところへ、お使いの者が飛んで参られまして、ふいっとそのお方様がお行方知れずになられたと、このように申されましたのでござります」

「なに? 行方知れずになったとな? それはまた、何時頃の事じゃった」

「お兄様がお帰り遊ばしましたほんの四半刻程前に、お使いの方が探しがてら参られたのでござります」

「ほほうのう――」

少しこれは世の中が退屈でなくなったかなと言わぬばかりに、しみじみとした面を愛妹菊路の方にさし向けて、なに事かをややしばし考えつめていましたが、俄然旗本退屈男と異名をとった早乙女主水之介は、その目にいつにないらんらんとした輝きをみせると、言葉さえも強めながら言いました。

「よし、相分った。では、この兄の力を貸せと申すのじゃな」

「あい……。このような淫らがましい事をお願いしてよいやらわるいやら分らぬのでござりますけれど、わたしひとりの力では工夫もつきませなんだゆえ、先程からお帰りを今か今かとお待ちしていたのでござります