Japanische Klassiker mit Furigana
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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme
四
久方ぶりの退屈払いには先ず頃合いじゃ。――行くぞッ」
ズバリと叫んで、今こそまことに冴え冴えと冴えやかに冴えまさったあの眉間傷に、凄婉な笑みを泛べつつ、ずいと前なるひとりにつめよろうとした刹那! ばたばたと慌ただしげに駈け近づいて来た足音があったかと思うまもなく、矢場の向う横から呼び叫んだ声がありました。
「お願いでござります! 御前様! 早乙女のお殿様! お願いでござります! お願いでござります!」
四
声は誰でもない千種屋のあの青白く冷たい、秋時雨のような若女房でした。女将は、その冷たく青白い面を、恐怖に一層青めながら、愛児を必死に小脇へかかえて、凝然とおどろき怪しんでいる黒白隊の間をかいくぐりつつ、退屈男のところへ駈け近づくと、おろおろとすがりついて訴えました。
「お願いでござります! 夫が、夫が大変でござります。御力お貸し下されませ! お願いでござります!」
「……※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
「夫が、夫が、早乙女のお殿様へ早うお伝えせいと申しましたゆえ、おすがりに参ったのでござります。今、只今、宿の表で捕り方に囲まれ、その身も危いのでござります。