Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme

Aozora Bunko

五

主水之介の目が簾垂れの中で、思わずピカリと光りました。消え入るような声で恥じらわしげに、おししがやりたいと言ったその声は、何ともかとも言いがたくなまめかしかったからです。

――しかもその身のこなし!

どう見てもそれは男ではない。

「ごぜん、ごめんなんし……」

パッと赤くもみじを散らして、消えも入りたげに、恥じらい恥じらい、駕籠の向うの小蔭へいって身をこごませると、さながらに女そのままの風情で用を足しました。

そのえも言いがたいなまめかしさ!……。

その身だしなみの言いようなきゆかしさ!……。

「ああ、いい女形だな……。名人芸だ」

思わず団十郎が感に堪えかねたように、すだれの中から呟きました。

主水之介もまた恍惚となって見とれました。

そのまに駕籠は大川端を下って料亭へ。

五

「いらっしゃいまし!……」

「あら! 成田屋さんじゃござんせんか。どうぞ! どうぞ! さあどうぞ……」

行きつけのうちと見えて、下へも置かない歓待ぶりです。

屋号は谷の家。

川にのぞんだ座敷には、いく張りかの涼しげな夏提灯がつるされて、青い灯影が川風にゆれながら流れ散って、ひとしおに涼しげでした。