Japanische Klassiker mit Furigana
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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme
「ほほう、そうか。では主水之介にそちの気ッ腑を買えと申すんじゃな」
「十五郎、無駄は申しませぬ。あっしの気ッ腑はともかく、妹たちは惚れ合った同士、不憫と思召しでござりましたら、うしろ楯となってやって下さいまし……」
「嫌と申したら?」
「………」
「人の喧嘩じゃ、身共の知ったことではない、嫌じゃ勝手にせいと申したら何とする?」
「………」
「どうする了簡じゃ」
「いたし方がござんせぬ」
さみしそうな声でした。あの気性なら、この気性を買って下さるだろうと思ったのに、当てがはずれたか! ――口では言わなかったが、十五郎は急にこの世がさみしくなったとみえるのです。全身これ精悍と思われた男が、しょんぼり立ち上がると、生血にもつれたおどろ髪を川風にそよがせながら、しょんぼりと出て行きました。
「まてッ」
刹那でした。ひとたび命を張れば豹虎のごとく、ひとたび悲しめば枯れ葉のごとくに打ち沈んで行くその生一本の気性が、こよなくも主水之介の胸を衝ったのです。
「眉間傷貸してやる! 妹の住いはいずれじゃ」
「え! じゃ、あの!……」
「眉間傷に暑気払いさせてやろうわい。小芳とやらの住いはいずれじゃ」