Japanische Klassiker mit Furigana
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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme
雲茫々、山茫々、鳥刺し怪しじゃ。ちとこれは退屈払いが出来ますかな」
いぶかりながら見眺めているとき、実に不意でした。
「貴様、まだまごまごしておるかッ。神域を穢す不所存者めがッ。行けッ、行けッ。行けと申すに早く行かぬかッ」
けたたましく怒号しながら、不審なその鳥刺しを突然叱りつけた罵声が、そこの森の中の社務所と覚しきあたりから挙りました。――ひょいと見ると、これがまた常人ではない。ふさふさした長い白髯を神々しく顔になびかせて、ひと目にそれと見える神官なのです。いや、神主だったことに不思議はないが、意外だったのはその年齢でした。叱った声のけたたましさから察すると、恐らく四十か五十位のまだ充分この世に未練のありそうな男盛りだろうと思われたのに、もう九十近い痩躯鶴のごとき灰汁の抜けた老体なのでした。しかも、その灰汁の抜け工合の程のよさ! 骨身のあたりカラカラと香ばしく枯れ切って、抜けるだけの脂は悉く抜け切り、古色蒼然、どことはなく神寂びた老体なのです。
「ウフフ、犬も歩けば棒に当るじゃ。ゆるゆる見物致すかな」
のっそり近寄っていったのを知ってか知らずか、老神官は翁の面のような顔に、灰汁ぬけした怒気を漲らしながら、なおけたたましく鳥刺しをきめつけました。