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Japanische Klassiker mit Furigana

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にちりん

日輪・春は馬車に乗って 他八篇

横光 利一

Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme

Aozora Bunko

しかし無論その答えだけでは承知が出来なかった。

「俺(おれ)はちょっと腹が痛いんだ。姉さん処の昼の肴(さかな)が悪かったんじゃないかね。姉さんは?」

と彼は訊(たず)ねた。

姉は顔を顰(しか)めるようにして彼を見ながら、

「私(うち)どうもないえ、ひどう痛むの?」と訊き返した。

姉も痛むといえばまた姉の腹部の子供に触(さわ)りが出来ているにちがいないという考えから、彼はそういうかけひきで訊いたのだった。ところが姉の腹は痛んでいなかった。少し安心が出来かけるとまた親の腹部の感覚と子供の感覚とは全く別物だと気がついた。親の腹が痛くなくとも子の身体は痛んでいるかも分らなかった。もう医者に姉の腹を見せるより仕方がないと彼は思った。しかし、見せるとすればまたどうしても一度は彼の心配の仕方を姉に話さなければならなかった。これが彼には羞しくて厄介(やっかい)だった。正式な結婚で姉は人妻になっているとはいえ、とにかくいずれ不行儀な結果から子供が産れて来たにちがいない以上、それをお互に感じ合う瞬間が彼にはいやであった。彼が黙っているので姉も黙っていた。

「まだ痛い?」