Japanische Klassiker mit Furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme
火
火
横光利一
一
初秋の夜で、雌(めす)のスイトが縁側(えんがわ)の敷居(しきい)の溝の中でゆるく触角を動かしていた。針仕事をしている母の前で長火鉢(ながひばち)にもたれている子は頭をだんだんと垂れた。鉄壜(てつびん)の手に触れかかると半分眼を開けて急いで頭を上げた。
「もうお寝。」
母は縫目(ぬいめ)をくけながら子を見てそういった。子は黙って眼を大きく開けると再び鉄壜の蓋(ふた)の取手(とって)を指で廻し始めた。母はまたいった。
「明日また遅れると先生に叱られるえ。」
子はやはり黙っていた。そして長らくして、
「眠(ねむ)たいわア。」といった。
「そうやでお眠(ねむり)っていうのやないの。」
「いやや。」
「お可(か)しい子やな、早(は)ようお眠んかいな。」
子は立上って母の肩の上へ負われるようにのしかかると、暫(しばら)く静(しずか)にしていたが、その中(うち)に両足で畳を蹴(け)り飛び上った。母は前へ蹲(かが)むようにして「重たいがな、これ、針でつくえ。」肩の子を見向きながらいった。子は再び静になった。
「ええ、お母(か)さん、眠たいわア。