Japanische Klassiker mit Furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme
二
「見よ、松明は輝き出した。」
「此処を去れ。此処は爾のごとき男の入るべき処ではない。」
「我は帰るであろう。我は爾の管玉を奪えば爾を置いて帰るであろう。」
「我の玉は、爾に穢されたわが身のように穢れている。行け。」
「待て、爾の玉は爾の霊よりも光っている。玉を与えよ。爾は玉を与えると我にいった。」
「行け。」
卑狗の大兄は笑いながら、自分の勾玉をさらさらと小壺に入れて立ち上った。
「今宵は何処で逢おう?」
「行け。」
「丸屋で待とう。」
「行け。」
大兄は遣戸の外へ出て行った。卑弥呼は残った管玉を引きたれた裳裾の端で掃き散らしながら、彼の方へ走り寄った。
「大兄、我は高倉の傍で爾を待とう。」
「我はひとり月を待とう。今宵の月は満月である。」
「待て、大兄、我は爾に玉を与えよう。」
「爾の玉は、我に穢された爾のように穢れている。」
大兄の哄笑は忍竹を連ねた瑞籬の横で起ると、夕闇の微風に揺れている柏のの傍まで続いていった。卑弥呼は染衣の袖を噛みながら、遠く松の茂みの中へ消えて行く大兄の姿を見詰めていた。
二
夜は暗かった。卑弥呼は鹿の毛皮に身を包んで宮殿からぬけ出ると、高倉の藁戸に添って大兄を待った。