Japanische Klassiker mit Furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme
一
彼の首から垂れ下った一連の白瑪瑙の勾玉は、音も立てず水に浸って、静かに藻を食う魚のように光っていた。
一
太陽は入江の水平線へ朱の一点となって没していった。不弥の宮の高殿では、垂木の木舞に吊り下げられた鳥籠の中で、樫鳥が習い覚えた卑弥呼の名を一声呼んで眠りに落ちた。磯からは、満潮のさざめき寄せる波の音が刻々に高まりながら、浜藻の匂いを籠めた微風に送られて響いて来た。卑弥呼は薄桃色の染衣に身を包んで、やがて彼女の良人となるべき卑狗の大兄と向い合いながら、鹿の毛皮の上で管玉と勾玉とを撰り分けていた。卑狗の大兄は、砂浜に輝き始めた漁夫の松明の明りを振り向いて眺めていた。
「見よ、大兄、爾の勾玉は玄猪の爪のように穢れている。」と、卑弥呼はいって、大兄の勾玉を彼の方へ差し示した。
「やめよ、爾の管玉は病める蚕のように曇っている。」
卑弥呼のめでたきまでに玲瓏とした顔は、暫く大兄を睥んで黙っていた。
「大兄、以後我は玉の代りに真砂を爾に見せるであろう。」
「爾の玉は爾の小指のように穢れている。」と、大兄はいうと、その皮肉な微笑を浮べた顔を、再び砂浜の松明の方へ振り向けた。