Japanische Klassiker mit Furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme
十二
十二
その夜から、奴国の野心ある多くの兵士たちは、不弥の女を捜すために宮を発った。彼らの中に荒甲という一人の兵士があった。彼の額から片頬にかけて、田虫が根強く巣を張っていたために、彼の形の刺青は、奴国の誰よりも淡かった。彼は卑弥呼が遁走した三日目の真昼に、森を脱け出た河原の岸で、馬の嘶きを聞きつけた。彼は芒を分けてその方へ近づくと、馬の傍で、足を洗っている不弥の女の姿が見えた。荒甲は背を延ばして馳け寄ろうとした時に、兎と沙魚とを携げた訶和郎が芒の中から現れた。
「ああ、爾は荒甲、不弥の女を爾は見たか。」
荒甲は黙って不弥の女の姿を指さした。訶和郎は荒甲の首に手をかけた。と、荒甲の身体は、飛び散る沙魚と兎とともに、芒の中に転がされた。訶和郎は石塊を抱き上げると、起き上ろうとする荒甲の頭を目蒐けて投げつけた。荒甲の田虫は眼球と一緒に飛び散った。そうして、芒の茎にたかると、濡れた鶏頭のようにひらひらとゆらめいた。訶和郎は死体になった荒甲の胴を一蹴りに蹴ると、追手の跫音を聞くために、地にひれ伏して苔の上に耳をつけた。彼は妻の傍にかけていった。
「奴国の追手が近づいた。