Japanische Klassiker mit Furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme
それにおりかは割りに平気であった。ある時彼は姪の臍の上に二銭丸の載っていない所を見付けた。彼は自分の読んだ書物の中で、そのような臍は恐るべき命(いのち)とりだと医者がいっていたということを、巧妙な嘘を混じえて姉にいいきかして嚇(おど)かした。
「そうかしら。」
そう姉はいうとちょっと笑って、
「死ぬものか、これ見な。」といって娘の臍をぽんと打った。
「馬鹿。」と末雄は笑いながら睥(にら)んだ。
するとおりかはまた二、三度続けさまに叩いてから、「ちょっと指を入れとおみ。」といった。
彼はふと弄(いら)ってみる気になって、人差指で姪の臍の頭をソッと押してみた。指さきは何の支えも感じずに直ぐ一節(ひとふし)ほど臍の中に隠された。それ以上押せば何処(どこ)まででも這入(はい)りそうな気がしてゾッとすると、
「いやだ。」といって手を引っこめた。
しかしこんな不安は間もなくとれた。そして、或(あ)る日おりかは彼に幸子が笑い出したと嬉しそうにいった。
見ているとなるはど時々幸子は笑った。それは何物が刺戟(しげき)を与えるのか解らない唐突(とうとつ)な微笑で、水面へ浮び上った泡のように直ぐ消えて平静になる微笑であった。