Japanische Klassiker mit Furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme
それは所々塗抹(ぬりつぶ)された粗雑な文字で、
「幸子は種痘から丹毒(たんどく)になりましたが、漸く片腕一本で生命が助かりました。」
とただそれだけが書いてあった。
彼は片腕を切断された幸子が、壊れた玩具のように畳の上でごろごろ転っている容子(ようす)を頭に浮かべると、対象の解らない怒りが込み上げて来た。彼はペンをとって葉書へ、
「幸子を姉さんのような不注意者に与(あず)けて置いたということが、こんな罪悪を造ってしまったのだ。」
と書いた。書いている中(うち)に涙が出て来て、インクを次ぐ時壺の中へうまくペンのさきが嵌(は)まらなかった。
彼はその葉書を持って外へ出た。
「とうとうやって来た。」
彼は自分を始終脅かしていた物の正体を明瞭に見たような気持ちがした。その形が彼の前に現れたなら必死になってとり組んでやると思った。不思議な暴力が湧(わ)いて来たがしかしどうとも仕様(しよう)がなかった。その中に幸子の大きくなってから一生彼女の心を苦しめる不幸を思うと、もう彼は暗い小路の中に立ち停ってしまった。
「俺の妻にしてやろう。」
ふと彼はそんなことを考えると、自分と姪の年の差を計ってみた。