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Japanische Klassiker mit Furigana

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にちりん

日輪・春は馬車に乗って 他八篇

横光 利一

Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme

Aozora Bunko

彼には横たわっている妻の顔が、その傍の薬台や盆のように、一個の美事な静物に見え始めた。

彼は二人の間の空間をかつての生き生きとした愛情のように美しくするために、花壇の中からマーガレットや雛罌粟をとって来た。その白いマーガレットは虚無の中で、ほのかに妻の動かぬ表情に笑を与えた。またあの柔かな雛罌粟が壺にささって微風に赤々と揺らめくと、妻はかすかな歎声を洩して眺めていた。この四角な部屋に並べられた壺や寝台や壁や横顔や花々の静まった静物の線の中から、かすかな一条の歎声が洩れるとは。彼は彼女のその歎声の秘められたような美しさを聴くために、戸外から手に入る花という花を部屋の中へ集め出した。

薔薇は朝毎に水に濡れたまま揺れて来た。紫陽花と矢車草と野茨と芍薬と菊と、カンナは絶えず三方の壁の上で咲いていた。それは華やかな花屋のような部屋であった。彼は夜ごとに燭台に火を付けると、もしかしたらこっそりこの青ざめた花屋の中へ、死の客人が訪れていはしまいかと妻の寝顔を覗き込んだ。すると、或る夜不意に妻は眼を開けて彼にいった。

「あなた、私が死んだら、幸福になるわね。」

彼は黙って妻の顔を眺めていた。