Japanische Klassiker mit Furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme
五
彼は酒気を吐きつつその剣を振り上げた。
「王子よ、王子よ。」
女は呼びながら長羅の胸へ身を投げかけた。が、長羅の身体は立木のように堅かった。剣は降りた。女の肩は二つに裂けると、良人の胴を叩いて転がった。
「長羅よ、酒楽は彼方である。朝はまだ来ぬ。行け、女は彼方で待っている。」
君長は剣を下げたまま松明の輝いた草野の方へ、再び蹌踉めきながら第二の女を捜しに行った。
長羅は突き立ったまま二つの死体を眺めていた。そうして、彼は西の方を眺めると、
「卑弥呼。」と一言呟いた。
五
奴国の宮の鹿と馬とはだんだんと肥えて来た。しかし、長羅の頬は日々に落ち込んだ。彼は夜が明けると、櫓の上へ昇って不弥の国の山を見た。夜が昇ると頭首を垂れた。そうして、彼の唇からは、微笑と言葉が流れた星のように消えて行った。彼のこの憂鬱に最も愁傷した者は、彼を愛する叔父の祭司の宿禰と、香取を愛する兵部の宿禰の二人であった。ある日、祭司の宿禰は、長羅の行衛不明となったとき彼の行衛を占わせた咒禁師を再び呼んで、長羅の病を占わせた。広間の中央には忍冬の模様を描いた大きな薫炉が据えられた。その中の、菱殻の焼粉の黄色い灰の上では、桜の枝と鹿の肩骨とが積み上げられて燃え上った。