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Japanische Klassiker mit Furigana

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にちりん

日輪・春は馬車に乗って 他八篇

横光 利一

Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme

Aozora Bunko

九

「ああ、我を刺せ。」

焔の家となった武器庫は、転っている死体の上へ轟然たる響を立てて崩れ落ちた。長羅は卑弥呼を抱きかかえたまま、ひらりと馬の上へ飛び乗った。

「去れ。」

彼は馬の腹をひと蹴り蹴った。馬は石のように転っている人々の頭を蹴散して、森の方へ馳け出した。それに続いて、血に塗られた奴国の兵の鉾尖が、最初の朝日の光りを受けてきらめきながら、森の方へ揺れて来た。

「卑弥呼。」と長羅はいった。

「ああ、我を刺せ。」

彼女は馬の背の上で昏倒した。

「卑弥呼。」

馬は走った。葎と薊の花を踏みにじって奴国の方へ馳けていった。

「卑弥呼。」

「卑弥呼。」

九

遠く人馬の騒擾が闇の中から聞えて来た。訶和郎と香取は戸外に立って峠を見ると、松明の輝きが、河に流れた月のように長くちらちらとゆらめいて宮の方へ流れて来た。それは不弥の国から引き上げて来た奴国の兵士たちの明りであった。訶和郎と香取は忍竹を連ねた簀垣の中に身を潜めて、彼らの近づくのを待っていた。

やがて、兵士たちのざわめきが次第に二人の方へ近寄って来ると、その先達の松明の後から、馬の上で一人の動かぬ美女を抱きかかえた長羅の姿が眼についた。