Japanische Klassiker mit Furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme
栗鼠は頭の上で、栗の梢の枝を撓めて音を立てた。
「大兄。」
野兎は※麻の茂みの中で、昼に狙われた青鷹の夢を見た。そうして、飛び跳ねると※麻の幹に突きあたりながら、零余子の葉叢の中に馳け込んだ。
「大兄。」
梟は木樹の梢を降りて来た。そして、嫁菜を踏みながら群る苡の下を潜って青蛙に飛びついた。
「大兄。」
しかし、卑狗の大兄はまだ来なかった。卑弥呼は藁戸の下へ蹲踞ると、ひとり菘を引いては投げ引いては投げた。月は高倉の千木を浮かべて現れた。森の柏の静まった葉波は一斉に濡れた銀の鱗のように輝き出した。そのとき、軽い口笛が草玉の茂みの上から聞えて来た。卑弥呼は藁戸から身を起すと、草玉の穂波の上に半身を浮かべて立っている卑狗の大兄の方へ歩いていった。
「大兄、大兄。」彼女は鹿の毛皮を後ろに跳ねて彼の方へ近か寄った。「夜は間もなく明けるであろう。」
しかし、大兄は輝く月から眼を放さずに立っていた。
「大兄よ、我は管玉を持って来た。爾は受けよ。」と卑弥呼はいって管玉を大兄の前に差し出した。
「爾は何故にここへ来た? 我はひとり月を眺めにここへ来た。」
「我は爾に玉を与えにここへ来た。