Japanische Klassiker mit Furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme
「ああ、訶和郎よ、もし我が爾に従って不弥へ廻れば、我は今爾とともにいるのであろう。ああ、訶和郎よ、我を赦せ。我は卑狗を愛している。爾は我のために傷ついた。」
卑弥呼は頭を上げて格子の外を見た。外では、弓を首によせかけた奴隷が、消えかかった篝火の傍で乾草の上に両手をついて、石窖の中を覗いていた。彼女は格子の傍へ近か寄った。そして、奴隷の臆病な犬のような二つの細い眼に嫣然と微笑を投げて、彼にいった。
「来れ。」
奴隷は眼脂に塊った逆睫をしばたたくと、大きく口を開いて背を延ばした。弓は彼の肩から辷り落ちた。
「爾は鹿狩りの夜を見たか。」
「見た。」
「爾は我の横に立てる男を見たか。」
「見た。」
卑弥呼は首から勾玉を脱すと、彼の膝の上へ投げていった。
「爾は彼を見た山へ行け。爾は彼を伴なえ。爾は玉をかけて山へ行け。我は爾にその玉を与えよう。」
奴隷は彼女の勾玉を拾って首へかけた。勾玉は彼の胸の上で、青い蜥蜴の刺青を叩いて音を立てた。彼は加わった胸の重みを愛玩するかのように、ひとり微笑を洩しながら玉を撫でた。
「夜は間もなく明けるであろう、行け。」と卑弥呼はいった。
奴隷は立ち上った。