Japanische Klassiker mit Furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme
反絵は二人の傍へ近寄った。そうして、その一人の腕から萩の一束を奪い取ると、彼の額を打ち続けてまた叫んだ。
「部屋を出よ、部屋を出よ、部屋を出よ。」
「大兄、我は王の言葉に従った。」
「去れ。」
「大兄、我は王のために鞭打たれるであろう。」
「行け。」
二人の使部は出て行った。が、彼らに続いてまた直ぐに二人の使部が、鹿の角を肩に背負って這入って来た。反絵は散乱した羽毛と萩の花の中に突き立って卑弥呼の寝顔を眺めていた。彼は物音を聞きつけて振り返ると、床へ投げ出された鹿の角の一枝を、肩にひっかけたまま逃げる使部の姿が、遣戸の方へ馳けて行くのが眼についた。反絵は捨てられた白鷺の尾羽根と竜胆の花束とを拾うと使部たちに代って円木の隙に刺していった。彼は時々手を休めて卑弥呼の顔を眺めてみた。しかし、その度に、細く眼を見開いて彼の後姿を眺めていた卑弥呼の瞼は、再び眠りのさまを装った。
「不弥の女。」と反絵はその野蛮な顔に媚びの微笑を浮べて彼女を呼んだ。
「不弥の女。見よ、我は爾の部屋を飾っている。不弥の女。起きよ。我は爾の部屋を飾っている。」
卑弥呼の眠りは続いていた。そうして、反絵のとり残された媚の微笑は、ひとりだんだんと淋しい影の中へ消えていった。