Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にちりん

日輪・春は馬車に乗って 他八篇

横光 利一

Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme

Aozora Bunko

赤い着物

村の点燈夫は雨の中を帰っていった。火の点いた献灯の光りの下で、梨の花が雨に打たれていた。

灸は闇の中を眺めていた。点燈夫の雨合羽の襞が遠くへきらと光りながら消えていった。

「今夜はひどい雨になりますよ。お気をおつけ遊ばして。」

灸の母はそう客にいってお辞儀をした。

「そうでしょうね。では、どうもいろいろ。」

客はまた旅へ出ていった。

灸は雨が降ると悲しかった。向うの山が雲の中に隠れてしまう。路の上には水が溜った。河は激しい音を立てて濁り出す。枯木は山の方から流れて来る。

「雨、こんこん降るなよ。

屋根の虫が鳴くぞよ。」

灸は柱に頬をつけて歌を唄い出した。蓑を着た旅人が二人家の前を通っていった。屋根の虫は丁度その濡れた旅人の蓑のような形をしているに相違ないと灸は考えた。

雨垂れの音が早くなった。池の鯉はどうしているか、それがまた灸には心配なことであった。

「雨こんこん降るなよ。

屋根の虫が鳴くぞよ。」

暗い外で客と話している俥夫の大きな声がした。間もなく、門口の八つ手の葉が俥の幌で揺り動かされた。俥夫の持った舵棒が玄関の石の上へ降ろされた。すると、幌の中からは婦人が小さい女の子を連れて降りて来た。