Japanische Klassiker mit Furigana
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いんじゅうトリステサ
橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇 (いんじゅうトリステサ) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 154.788 Zeichen · 299 Bildschirme
「お前は知るまいが、今夜は奥さんの友達が大分家へ来て泊っている。召使たち全部には朝八時まで一晩の休暇をやることにしたから、お前にもその休暇をやる」
「ハイ!」
「これはわずかだが……みんなにもやったことだから」
「ハ! それはどうも……」と運転手は帽子を脱いだ。
「玄関の方はもう戸締りをしてしまったから、このままスグ行ってよろしい!」
「ハ!」何を言ってもハ、ハ言ってるばかりで此奴はちっとも出かけたがらぬ奴であった。
「遠慮せんでスグ行ってもいいのだ。なまじ服なんぞ着換えにはいって、お客様方の眼に付いてもかえって何だからスグ行った方がよかろう。バルカももう出かけて行った」バルカはもう一人の運転手であった。
「旦那様はどちらかへお出かけでございましょうか?」
「なに、私は庭をブラ付いとるだけだ」
「そうしますと……ほんとうにこのまま出かけましてもよろしいのでございましょうか?」
「かまわん、かまわん! むしろその方がよろしいのだ」
この運転手だけは何か気の進まぬ浮かぬ風であったが、私は手を取らんばかりにして遮二無二急かし立ててしまった。そして運転手の姿が門前へ消えるのを待って、つと門番小舎の中へはいって行った。