Japanische Klassiker mit Furigana
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ゆしまもうで
湯島詣
泉 鏡花
Lesen Sie 湯島詣 (ゆしまもうで) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 62.004 Zeichen · 122 Bildschirme
十六
「おいで、おいで。さあ、」
「可いよ、おかみさんこっちへ。」
「でもまた奥様がその何ですから、おほほほほ、」と主婦は三角の口を丸うして笑って控える。
「何を、詰らない。」
「はい、はい。」
膝に手を垂れ、腰を屈めて、戯に会釈すると、トンはよくその心を得て、前足を下して尻尾を落した。扁い犬の鼻と、主婦の低い鼻は、畳を隔てて真直に向い合った。
「おお、可し、可し。」二ツばかり頷いて、「それではお邪魔を致しましょうか。」
同時に、ど、ど、ど、ど、どんと床板を踏鳴して、
「厭! 厭よ、」と壁の中から唐突に声を出した。
主婦は驚いて退って、
「まあ、済みません、どうも。」
蝶吉は振乱すように壁に押着けた島田髷を揺ぶって、
「私、厭、厭よ。」
「泣いてるんだよ、おや、ま、どうしたッてこッたろう。驚きますねえ、」
と平手を二ツ乳の上へあて、目をって、
「しようのない嬰児ちゃんだよ。」
十六
「どうにかしてやっておくれ、面倒だから。」
梓は膝からトンを掻退けて、座も言葉も更めて言った。
「さあ、あなた、」とこれもちゃんと極って背に手を掛けると、訳もなく振払って、
「厭です。」
「拗るもんじゃあありません、あの方が来ていらっしゃるのに、何が気に入らないで、じれてるんですよ、母様は知らないよ。