Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

「ところで、最前の品は」

「側に持っておりまする」

「酒の肴に、検めようかの」

「よろしゅうございましょう」

「主水、おまえは、退がれ」

「なぜですか、父上」

と、主水は露骨に不平のいろを示した。

「見てもつまらぬ物じゃ。あっちへ行けと申すに」

「よいじゃございませぬか。つまらぬ物ならば、見ても差支えないわけでしょう」

「そちが見ても、益にはならぬから立てと言うんじゃ。わからん奴め」

「まあ、それまでに仰っしゃるならば、お見せした方がよいではございませぬか。他人とは違いますからね」

玉枝は、父子喧嘩を取做すようにそう言って、帛紗から出した小筥を、卓の端にのせた。古代蒔絵の溶けそうな筥である。

「何ですか」

と、主水は無遠慮に顔をつき出した。

玉枝は笑いながら、

「当ててごらん遊ばせ」

「香筥」

「いいえ」

「琴の爪入れ」

「あれはもっと小さな物でございますよ」

「では、笄筥じゃ」

「あたりました」

「何だ、つまらぬ」

「中は?」

「中身は違うのか」

「まさか江戸表から、櫛や笄などを入れた物を、護っては参りませぬ」

「わからぬ。開けてみい」

玉枝は、指をかけて、蓋を開いた。

「おや、中はただの白木の箱じゃないか」