Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

「火急、談じ申したいことがあって」

と、厳しく、改まった。

その眼! その語気! 既に火のようである。

「ほ、談じたいこととは」

「伜郁次郎の儀について」

「では、この度のことはもうお聞き及びであるな」

「承った」

と、息を嚥む。

「なんとも、お察しする。悪事をする子ほど可愛いとは、俗にもいうことば、さだめし、ご愁心であろう。しかし、もう今日と相成っては、如何とも、いたし難い。お諦めが肝要であろう」

老人の面は、見るまに、朱を注いだ。その灼きつくような眸は、憤ろしい涙にうるんでいる。

「あいや、奉行のおことばではあるが、伜郁次郎は、決して、左様な極悪人ではない。子を見ること、親に如かずじゃ。この親たる江漢が断じて言う、断じて言う! 郁次郎を罪人というお眼識は違っている」

「親子の情愛、そう思われるのは無理もないが、すでに、動かし難い幾多の証拠が蒐まっている」

「証拠? その、証拠とは?」

「いちいち、ここで述べ立てるよりは、これを一見した方が早かろう」

主計頭が、調書をそれへさし出すと、老人は、顫く手に取り上げて、それを、最初の第一項から、血走ッた眼で読み始めた。