Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

「さても、お変りなされたお姿ではある。何と、お慰さめ申そうやら、何と、お詫びをいたそうやら、江漢の胸はただただいっぱいで、張り裂けるようじゃ……。五百之進殿! 定めし貴殿の霊はご無念であろう。現世に、心残りなことでござろう。したが、世に、永らえて生き老いることも、辛うござる」

老先生は、そう言って、大地に手をついた。はらはらと、落涙した。

さながら、生ける人にでも、言うように。

冷たい――黙せる石――。それは、花世の父、富武五百之進の墓標であった。

「郁次郎の身に秘密があったばかりに、ご息女の花世どのには、意外な苦労をかけ、貴殿には累を及ぼして、あたら自害をさせてしまった。――ああ! わしは、何という迂濶者だ! 伜の秘密を、未然に、処置してやらないばかりか、伜が、江戸表へ帰って、貴殿の温かい手に匿われていることも、貴殿が、そのために、腹を切って、果てたことも、当時は、夢にも知らずにおッた。面目ない! ここに会わせる顔もない。五百之進殿、勘弁してくだされい」

大地は、老人の、さんさんたる涙を吸った。

僧院の人のすさびであろうか、どこかで、ほそぼそと、尺八の音がながれた。