Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

羅門・来る!

無論、隣り近所にもかたく口止めをしてある。そして二人は外に、東儀与力は屋内にひそみ、指南間の大きな花梨の客卓を衝立のように立てかけて、その蔭に、息をころして張りこんでいた。

三日目……四日目……何事も起らない。

すると、五日目の夜半である。少しつかれてとろとろしかけたところへ、よほど勝手を知っているらしい男が、庭の網代門をこじ開けて、こっそりと雨戸の外に忍び寄り、

「玉枝……玉枝……。ここを開けてくれい」

と、四隣を憚るような声で、ほとほと、軽くそこをたたいた。

羅門・来る!

「む、来たな……」

と、東儀与力は、自分の鼓動を聞きながら、じっとがまのように、客卓の蔭にかがみこんでいた。

「……いないのか、玉枝は」

すうっ、と風が流れこんで来たので、曲者が戸を開けたことは察しられた。――東儀与力はとたんにハッと息がつまッた。

のっそりとそこにはいって来たのは、眉深な黒の頭巾に、黒の羽織、すべて黒ずくめに装った色の白い武士である。まさしく、加山と波越が増上寺で逸した、唖男の連れだというあの武士にちがいない。

が――黒衣の武士は、そこに立つとすぐに、はてな? という風に嗅覚を働かせた。