Japanische Klassiker mit Furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme
「ほんとうに今日は―――」
そう云いながら美佐子は立って、羽織を着せるために夫の背中の方へ廻った。
「―――いいお天気じゃありませんか。芝居なんぞには勿体ないくらいだわ」
要は二三度彼女の指が項のあたりをかすめたのを感じたが、その肌触りにはまるで理髪師の指のような職業的な冷めたさしかなかった。
「お前、電話をかけて置かなくってもいいのかね?」
と、彼は妻の言葉の裏を尋ねた。
「ええ、………」
「かけてお置きよ、でないと僕も気が済まないから、………」
「それにも及ばないんだけれど、………」
「しかし、………待っていると悪いじゃないか」
「そうね、―――」
彼女はちょっとためらってから云った。
「―――何時頃に帰れますかしら?」
「今から行けば、仮りに一と幕だけとしても五時か六時にはなるだろうな」
「それからじゃあんまり遅いでしょうか?」
「そんなことは差支えないが、何しろ今日はお父さんの都合でどうなるか分りゃしないぜ。一緒に晩飯を附き合えとでも云われたら断る訳にも行かないし、………ま、明日にした方が間違いがないよ」
そう云っている時、小間使いのお小夜が襖を開けた。
「あのう、須磨から奥様にお電話でございます」