Japanische Klassiker mit Furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme
うわべはいかにも嬉しそうにして見せるけれども、それも事に依ると親たちの苦慮を察して、子供の方があべこべに二人を安心させようと努めているのかも知れない。子供の本能と云うものはそう云う時に案外深い洞察力を働かすもののように思える。だから要は親子三人で散策に出ると、父は父、母は母、子は子と云う風に、三人が三人ながらバラバラな気持を隠しつつ心にもない笑顔を作っている状態に、我から慄然とすることがあった。つまり三人はもうお互に欺かれない、夫婦の馴れ合いが今では親子の馴れ合いになり、三人で世間を欺いている。―――なんで子供にまでそんな真似をさせなければならないのか、それが彼にはひとしお罪深く、不憫に感ぜられるのであった。
彼はもちろん自分たちの夫婦関係を新道徳の先駆者のような態度を以て社会へ触れ廻る勇気はなかった。自分の行っていることには多少の恃むところもあり、良心に耻じる点はないのであるから、まさかの場合は敢然として反抗しないものでもないが、そうかと云って、強いて自分を不利な立ち場に置きたくはなかった。父の代ほどではないにもせよまだ幾らかの資産もあり、名義だけでも会社の重役という地位もあり、かつかつながら有閑階級の一員として暮して行くことの出来る身として、なるべくならば社会の隅に小さく、つつましく、あまり人目に立た