Japanische Klassiker mit Furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme
ながら苦々しくさえ感じていた。一言にして云うとこの女は、ホリーウッドのスタアどもの写真と、たまには鈴木伝明や岡田嘉子の肖像なぞを所嫌わずピンで留めてある薔薇色の壁紙に包まれた中に住んでいて、彼の味覚と嗅覚とをよろこばすためにペディキュールをした足の甲へそっと香水を振っておくだけの、ゲイシャ・ガールには思いも寄らない用意と親切とを尽すのである。彼は必ずしも面あてにそうした訳ではないが、美佐子が須磨へ出かけた留守に「ちょっと神戸へ買い物に行って来る」と、身軽な運動服のいでたちで出て、夕方頃には元町あたりの商店の包みを提げながら戻って来るのを常としていた。こう云う遊びは貝原益軒の教に従って、―――然しながらその教とは反対な趣味の上から、―――午後の一時か二時頃の日の高い間を選んで、帰り道に一ぺん青空を見た方が後味がさっぱりとするし、全く散歩の気分を以て終始することが出来るのを、経験に依って要は知っていたのである。ただ困るのはこの女のお白粉の移り香が特別に強く、体に沁み着いて離れないのみか、着ていた洋服はもちろんのこと、自動車へ乗ればその箱の中へ一杯に籠るし、家へ帰ると部屋じゅうが臭くなることだった。