Japanische Klassiker mit Furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme
「じゃ、ほんとうにお金を持って来てくれる?」
「分った、分った」
扇風器の風を湯上りの背中へ浴びながら、彼は自分でもその現金さに呆れるくらい、へんに冷淡に、そそくさとパンツへ脚を通した。
「きっとだわね?」
「きっと持って来る」
そう云いながら握手をする時、「きっともう来ないぞ」と心の中では云うのであった。
きっともう来ない、―――ボーイに門を開けさせて、表に待っている車の中へ身をひそめながら、いつでも彼は帰りがけにこの決意を堅めて、扉の隙間から接吻を送っている女の顔へ心ひそかに永久の「さよなら」を投げるのであるが、奇妙なことにそれが三日とつづくことはなかった。三日がやがて五日となり、一週間となるあいだに、再びこの女に会いたい思いが馬鹿々々しいくらい萌して来て、ずいぶん無理な繰り合わせをしてまで一途に飛んで来るのである。会う前の恋いしさと会っての後の胸ぐるしさ、―――そう云う心の変りかたはこの女の場合に限ったことではなく、芸者と馴染んでいた時分にも少しは覚えのあることだけれども、しかしこんなに冷熱の度が激しいと云うのは、畢竟生理的の原因に依るからなので、それだけルイズは酔わせかたの強い酒なのであろう。