Japanische Klassiker mit Furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme
始めた。
「あれきり御無沙汰しているが、近いうちに僕も一ぺん会っておくかな」
「ええ、―――京都へ行く前になさる? 後になさる?」
「向うの都合はどうなんだ」
「明日にも御入洛待上候と云うんだから、京都を先になすったらどう? 此方へやって来られると面倒だし、それにその方が極まってからなら、自分ばかりでなく母にも会って戴くと云っているんですから」
「お前、そこに高夏の手紙はないのか」
恋人の許へ急ぐべく身支度をしている「一人の女」を、むしろ可憐な眼を以て眺めていた要は、廊下へ出て行くそのうしろかげを呼び止めて云った。
「あれをあなたに見せるつもりで何処かへ置き忘れてしまったのよ、帰って来てからでよくはなくって? ―――尤もさっき話したようなことなんだけれど」
「いや、見つからなければどうでもいいんだ」
妻が出かけてしまったあと、要はビスケットを一と握りつかんで犬小屋の方へ降りて行って、二頭の犬に代る代る餌を与えたり、じいやと二人でブラシをかけてやったりしたが、暫くすると茶の間へ戻ってぼんやり畳に寝そべっていた。
「おい、誰かいないか」
と、お茶を入れさせようとして女中を呼んでみたけれど、部屋に引っ込んでいると見えて返辞をしない。