Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 157.440 Zeichen · 313 Bildschirme
冷飯は残っているはずだし、酒の燗くらいはおれだってつけられる」
「済みませんね、親分にそんなことまでさしちゃ」
「お世辞をいう間があったら、火でも起してくれよ。お客様をコキ使っちゃ悪いが」
「ヘッ、違げえねえ」
平次と八五郎は、それでも何うにか膳の支度をしました。
男手の埒のあかない仕事で、差し向いで猪口を取ったのは、もう薄暗くなってから。
「姐さんは、遅いじゃありませんか。先刻ちょいと迎えに行くんでしたね」
「放っておけよ。暗くなれば、お袋が送って来るだろう」
平次は呑気そうにいいますが、さすがに留守中に外へ出たことのないお静のことを考えると、酒の味がホロ苦くなります。
暢気者のガラッ八も妙に沈んでしまいました。親分平次の恋女房お静は、八五郎に取っては永遠のベアトリーチェで、お静に万一のことがあれば、喜んで命を投げ出すかも知れない、八五郎の心意気だったのです。
内気で優しくて、何時までも娘々したお静、その清潔な美しさと、行き届いた世話女房ぶりは、親分の恋女房という、厳重な埒を据えて、八五郎の崇拝の敬慕の的だったところで、何んの不都合があるでしょう。
ホロ苦い酒が、一本二本と重なりました。