Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 157.440 Zeichen · 313 Bildschirme
銭形の親分から、しみじみとお礼をいわせるぜ」
「でも、私は極りが悪い」
「何をいやがる」
大変な騒ぎで格子の中へ引摺り込んだのは、眉の痕の青々とした素晴らしい年増――谷中の五重の塔の下に、さみしく花など売っている茶店の女房のお銀だったのです。
「あッ、お前か」
年増の顔を一と眼、平次は少したじろいだ形でした。いつぞや八五郎の口から、この美しい女房が、平次に岡惚れしていて、八五郎をつかまえては、平次を連れて来てくれとせがんでいたことなどを聴かされていたのです。
「親分さん――私は大変なことをしてしまいました」
「大変なこと?」
八五郎はおうむ返しに訊ねます。
「お神さんが悪者に騙されて五重の塔へ入れられるのを、私は見てしまいました――御存じの通り私の店から五重の塔は眼と鼻の間なんですもの」
「――」
平次の眼は黙ってその先を促します。紫陽花色の単衣、青々とした眉、そして抜けるほど白い顔の色――糸切歯が一本欠けて、笑わなくとも片えくぼの寄る豊かな頬――この女の魅力は全くこの世のものとも思えぬ幽玄なものでした。
少し鼻にかかるアルトの、不思議な肉感的な媚びさえなかったら、この女は活身のそのまま、伝説の物の精とも見えたことでしょう。