Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 157.440 Zeichen · 313 Bildschirme
まさか逃げるんじゃあるまいな」
「逃げるか逃げないか、試して御覧なさいよ。ちょいと、八さん」
下から見上げる妖艶な眼、トロトロと情火に燃えて、それは悩ましくもまた美しいものでした。
二十歳の白歯、豊艶この上もないお栄が、その五体に溢れる全魅力を動員して、何んの憚るところもなく八五郎に迫るのでした。
黒髪に※(「火+(麈-鹿)」、第3水準1-87-40)きしめた、不思議な異香が、この女の甘酢っぱい体臭とカクテールになって、八五郎の官能をグイグイと揺ぶるのです。
透き通るようなとろりとした肉づき、大きいうるんだ眼、そしてグミのように熟れた唇と美しい歯並みが、物いう毎に妖しい魅力を撒き散らして、土蜘蛛の巣を掛けたように、男の全生命を縛り上げるのです。
「なア、お栄さん、思いきっていうが――俺はこんなにまで酔っ払って、お前というものの懐中に飛び込んだが、土壇場になっても、たった一つ、打ち融けないことがあるんだよ」
「まア、それは一体どんなことなの八さん、思いきっていって下さいよ、――どんなことでも私は、八さんの無理を聴いて上げたい心持でいっぱいなのに」
お栄は伸び上がって囁くように、八五郎の耳のあたりに柔かい息を吹き送るのでした。