Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ みやもとむさし
随筆 宮本武蔵
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 宮本武蔵 (ずいひつ みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 141.786 Zeichen · 278 Bildschirme
何事やらん――と思ったように、竹やぶの中の百姓家から、お婆さんやら子供たちが出て来て見物してくれる。附近の山で山仕事していた男だの畑の女たちも崖の上から首を出す。自責を感ずるの余り昂奮して物もいわない運転手は、躍起となって、とにかく半町ばかりバックさせた。それから方向をまわすのに一難儀あって、やっと僕らを乗せて元来た道へ向うと、タンクのように土壌の波に揺られて走りだした。
するとさっきから見物していたお婆さんや子供たちが、突然、何かわめいて車を追いかけて来た。運転手はやけくそにハンドルを廻し、その声をふり捨ててしまったが、後で訊くと、草むらに横たわっていた鍬の柄を轢き折ってしまったのだという。かわいそうなことをしたと思ったが、もう陽が暮れかけているのである。このあんばいで下り松が分るかしらと、そろそろ無駄骨を心のすみで悔いたりしていた。
ウインドを開けて、荒物屋の娘さんをつかまえて訊ねていた運転手は、ハンドルを持つとこんどは元気づいて、
「わかりました。詩仙堂のそばだそうですから」
と、郊外の淋しい通りを、無遠慮に速力を出してゆく。
「じゃあ、下り松という地名が、今もあることはあるんだね」