Japanische Klassiker mit Furigana
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せいねんのしさくのために
青年の思索のために
下村 湖人
Lesen Sie 青年の思索のために (せいねんのしさくのために) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.550 Zeichen · 203 Bildschirme
三
という堅信に生きたキリスト、心を三世に拡充して、自由独尊の境地を拓いた釈迦、これらの人々には、こうした意味の旗じるしは、もはや無益であり、あるいは邪魔ですらあったのかも知れぬ。だが、左文にとっては、それが必要であった。そして、われわれの多くは、決して左文以上の勇者ではあり得ない。左文をわらった諸将と同じく、人生の戦いにおいて、ややもすれば恥を忘れて逃げ出そうとする卑怯なこころの持主である。だから、われわれにとって、旗じるしは決して無用なものとはいえないのである。
ところでよく考えて見ると、旗じるしをかかげることそのことが、すでに容易ならぬことである。誓いのこもらない旗じるしなら、何時でも、何処ででも、そして誰でも掲げることが出来るであろう。しかし、真に誓いのこもった旗じるしは、なま半可なこころでは掲げられるものではない。左文を笑った諸将のように、場合によっては逃げるであろうことを、心の何処かで予定していたのでは、「一足不去」とはなかなか書けないであろう。それを書くには、勇気と確信とが要る。天をあざむかず、おのれを欺かざる底の勇気と確信とが要る。少くとも、人を欺かざるだけの正直さは、かならず持ちあわせていなければならない。