Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
闇の手招き
禍いと悩みは知ることから起こりがちなものだ。かの女の心も外へうごきかけている。
――それから四、五日後であった。
「お千絵殿……お千絵殿……」
と、寝所の戸の外で呼ぶものがある。
加茂は暗い深夜であった。
闇の手招き
その晩も、寝つかれずに悩んでいたかの女は、また時たって、
「お千絵どの」
と、どこかで呼ぶ声に、つい雨戸を開けた。
見ると――
細い明りがさしたのを知って、すぐ垣の際まで寄ってきた男が、
「こなたへ――」
と、萩の外から顔を伸ばして手招きをしている。
ゾッと身の毛を立てて、お千絵は戸を閉めてしまった。そして、巣にもぐった小鳥のように、おびえた目をして、夜具の中で動悸を抑えた。
真夜半である。河の水音が雨のようだ。
「小間使たちを起こそうかしら……」お千絵はふるえながら考えていた。そして、後悔していた。
「なぜ私はうかつに戸などを開けたのだろう?」と。
しかし、心の迷いがあるから、茫漠としたものへあせる気がうごいているから。という自省はその時お千絵にはなかった。
「今のお方……」
外の男は、そこを去らずに、根よく声をかけていた。
「もし、お千絵殿。