Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ごべんのつばき

五瓣の椿

山本 周五郎

Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme

Aozora Bunko

という、しゃれた掛け行燈を掲げた料理茶屋がある。門構えだが地所にゆとりがないので、門からひと跨ぎで玄関だし、板塀と建物とのあいだも三尺そこそこしかない。座敷の数も下に小さいのが三つ、二階に八帖と六帖があるだけだが、表の八帖は大川に面しており、縁側へ出れば広い川口と、佃島をまぢかに、品川沖までの海が眺められる。「海石」はその眺望と、海の活き魚料理が売りもので、開業してから二年足らずだが、かなり繁昌しているし、ひいき客も付いていた。

得石がはいってゆくと、小女が出て来、吃驚したように奥へとんでいった。すると、内所の障子をあけて、おかねが出て来た。得石は女の顔が赤くなっているのを認めた。

「お帰んなさい」とおかねが笑いかけた、「いま藤井さまのお相手をしていたところなの、二階へいらっしゃる」

「藤井とは誰だ」

「あらいやだ」おかねは打つまねをし、声をひそめた、「久世出雲さまのお下屋敷の、藤井新五郎さまよ、知ってるでしょ」

「それが内所で飲んでるのか」

「二階へいきましょ」おかねは巧みに彼を階段のほうへ押していった、「お友達とゆうべなか(新吉原)へいらしって、けさ別れ際に喧嘩をなすったんですって、飲み直したいから相手をしろって云われて」