Japanische Klassiker mit Furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme
「しょうばいを忘れやあしないだろうな」階段を登りきったところで、彼は女に振り返りながら云った、「うちは料理茶屋だ、客は座敷にとおすべきだし、気ばらしがしたければ芸妓でも幇間でも呼ばせるがいい、内所でおまえが相手をしたって、しょうばいにはならないだろう」
「芸妓だの幇間だのってとんでもない、藤井さまにはかなりお勘定が溜ってるのよ」とおかねは彼の着物の衿からなにか摘み取った、「だから今日だってあちらの仰しゃるとおり佃煮とお新香で、お酒は燗ざましを出してるの、来たときにもう酔ってたんだから、どうせなにを飲ませたってわかりゃしないわ」
そして大川のほうを見、「まあ、いい水の色だこと」と云って座敷へはいった。得石は指の背で口髭を撫でながら、おかねの出した座蒲団に坐り、鹿革の手提を脇に置いた。おかねは火鉢をひき寄せ、いま火を持って来ますから、と出てゆこうとした。
「燗ざましか」と得石が呟いた。
「え、――なにか云って」
「燗ざましか、と云ったんだ」彼は火のない火鉢の縁へ手をやった、「まあいい、火を貰おう」
はいただいま、と云いながら、おかねは脇を向いてしかめっ面をした。