Japanische Klassiker mit Furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme
また、暗い気持ちになった。
――何たることだ――
起こした半身を、再び堤に倒して草の葉に顔を埋めた。土の匂いがする。一瞬、くにの耕土に親しんでいる老いた父と母の顔が、頭を掠め去った。
――キキ――
頭の上で、鳥の声がした。いそしぎだろうか、川千鳥だろうか。
幼い頃、父に伴われて故郷の川へ鮎釣りに行くたびに、河原で聞いたいそしぎの声に似ているのである。私は額をあげて、ぼうっとした視線を、淀の川瀬に向けた。
私の寝ている堤の下に、しがらみ(柵)があって、その下手は瀬かげをつくり、水が緩やかに流れている。そこに、二羽のゆりかもめが浮いていた。淀川の水は澄んで、薄くれないの脚が透けて見えた。
――悩ましき、みやこ鳥――
淀の川瀬にまで、ゆりかもめがいようとは思わなかった。
――とにかく、おれは生きのびた。もう何も考えまい、考えまい、また眠ろう――
堤にすりつけた顔に、土の香がひとしお強かった。
これは、私が二十三歳の四月の半ば過ぎの、できごとであったのである。
二
淀の流れに近い八幡の町までたどり着いたのは、前の日のひる頃であった。
『夜逃げ』を決心した時、日本地図を広げて志す国を、ここかしこと捜した。