Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
だから門を取払って、玄関から建て出しを設け、そこを店舗としてみたところで、お客はいちいち小橋を渡って来なければ商品を覗くことさえも出来ないのだった。
すぐ南隣りは、大串という呉服問屋の大家の住居で、これも同様な橋懸りに長い黒板塀をめぐらし、その先も、また赤門寄りの静かな通りも、すべて生垣や門構えばかりである。ただ近所に変った家といえば、カゴ虎という俥宿と、英町の近くに、駄菓子屋、焼芋屋、小間物屋ぐらいがチラとあるだけの界隈だった。人通りとて、ほとんど少ない。そんな所で一体、どんな客を目標に開店したのかと、近所が怪しみあったのもむりはない。
けれど父は大真面目でこれに資本をつぎ入れたものである。“みどり屋”という屋号は、父の出生地である小田原の緑町をとって名づけたものだと母が云った。母はまたぼくに向って、「お父さんは、どうしても英は実業家にする。そのためには、今から商いを覚えていなければいけないって、それでこれを始めたんですよ。だから、おまえがいちばん一生懸命にお店番したり、学校のひまには、そろばんや商品なども覚えるようにしなくてはいけませんよ」