Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
――ぼくら小さい者の感覚では、嫂が家庭に交じってからのいざこざ事は何もなかったように思うが、問題はむしろその前にあったらしいのである。
つまり、感情の激発やら、折衝のいざこざなどは、結婚にいたるまでの事前に、もうさんざんやってしまっていたのだ。そして、以後の苦しそうな緘黙は、その紛争に負けた父がいやおうなく支払わせられていた敗北の賠償だったように思われる。
さきにも、ちょっと触れたが。
義兄が父と喧嘩して「ぼくは、ぼくで独立します」と威勢よく下宿生活へ移って行ったのはいいが、まもなくその下宿先から飛んでもない尻が父の許へ持ちこまれた。
これが元町の山田という相場師だった。銀ギセルを横咥えに、唐桟の羽織に角帯といった風采で、見るからに、ぼくの父などとは肌合いの違う人であった。体格もでっぷりとしてい、仲通りの相場師仲間でも怖がられた者だったそうである。
義兄の政広が、下宿中に、妊娠させたのは、この人の娘だった。「どうしてくれる?」という事になったのだろう。強硬な相手に出会うと相手を超えて強硬になるのが父のつねだった。父と山田とのぶつかりあいは闘牛場に選び出された二頭の角ツキ合いみたいな結果しか出なかったろう。