Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
それよりは、男と女とがそうして寝るという実際を初めて見た驚異の方がまッ先にぼくを痺れさせていたのだろう。そして無自覚に薄目を作していたことだの、はからずも見てならない秘密を見たとおもう体のすみや胸の動悸は期せずして一つにしていたようである。それ以上、肉体上の空想には思い及んでいなかった。
もっとも、ぼくの印象自体が、じつは半寝ぼけであったかもわからない。けれどそれにしても胸がつぶれるような息のこらし方をしていたし、そうしているうちに、花嫁と義兄の影がそこはかとなく寝姿のかたちを更えていた事だの、蚊帳の青い波がぼくの頭のあたりへまで静かに揺れ縒れてきた気配などまで、今でもかなりある部分は鮮明に記憶をよび出すことが出来るのである。そして総合的には決して醜い生き物の行為としてではなく、ひどく幻影化された美しいあるものの秘戯を睫毛越しに透して見たという程度にしかぼくの肉体には影響していなかった。ひとえにそれは花嫁も文金の高島田を大事に枕にのせていた初夜のためであったろう。そして又、ぼくにとって生れて初めての驚異すべき目撃の一つが、そうした美しさに見えたということも、なおすばらしい幸福だったように今でも思われている。