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Japanische Klassiker mit Furigana

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わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme

Aozora Bunko

と、ほかの事には一銭も費わず、ちびちびとみんな運んでしまったそうである。

子供心に、ぼくはこの伯父のうらぶれた晩年のまろい背中を憶えている。弟にあたるぼくの父の所へ、度々、無心に来ていたものである。余りにしばしばなので、父と烈しいいい合いをして帰って行く日の淋しい姿や、父の留守にやって来て、ねっちりと長居しているこの人に、母が何かと気をつかって密やかな苦労をしぬいていた日のことなど、おぼろに思い出されもする。「秋山の家内です」という小母さんも時々見た。髪へ横櫛でも挿しそうな小いきできれいな人だった。父のこの兄は、父より早く亡くなった。

銀左衛門についてのも一つの話は、父がまだ年少の頃にもある。

父は、直広というが、少年時代は、丈之助とよばれていた。ある冬、風邪が流行った。母も下男も寝こんでしまい、小さい姉が夕方の台所をやっていた。

まだ十歳そこそこの丈之助は、戸外で遊びに夢中になっている。姉が呼びぬくので、ふくれながら勝手口に立つと「丈さん、良い子だから、町へ行ってお豆腐を買って来てくれない」と云う。「いやだい」と一言のもとにかぶりを振った。「そんなこと云わないで」