Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme

Aozora Bunko

――中にはぼくの蒲団やら着更えやら、また日頃の愛読書だの学校用具まで入っていた。母が、初めてわが子を奉公に手放す気案じの思い過ぎなまでの物がそれには一ぱい詰まっていたのである。

ところが、おかみさんの眉はみるみる不機嫌になって「なアにこれ? 冗談じゃないわよ、おまえさん」と近藤夫人へ向って、「まるで、ヘタなお嫁入り荷物じゃない。奉公人が、友禅の夜具蒲団をかついで来るなんて、持たせてよこす親の気も知れないけれど、おまえさんの考えだって、間違ってるわよ。うちでは、小僧を世話して貰いましょうとは云ったけれど、何も、よそのお坊っちゃんを預かるなんて云ったわけじゃないものね」と、けんもほろろに、煙草のヤニだらけな前歯を遠慮なく見せたあげく、「いいわよ、蒲団なんかは、前にいた正どんの夜具があるから、これは持って帰って頂戴。そして、この子の親御さんによく云ッといてよ。宅では、徒弟としてお預かりするんですからってね。徒弟だって、六、七年は仕込まなければ一人前に成りやしないのよ。それまでは丁稚奉公のつもりでいて貰わなくちゃあ」

おかみさんに云いまくられると、近藤夫人は一も二もなく黙ってしまう。