Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme

Aozora Bunko

ぼくは銭がないから、アミダ籤の仲間には入らない。だからといって、皆が愉しんでいる間、外へ出ているのも変だし、横を向いているのもなお変だった。つい隅の方で、相場日報とか生糸通信なんて、てんで心の通わせようもない印刷物などを読む振りをしている。すると誰かが「おい。こっちへ来なよ」と気がついたように、ぼくへその日の菓子か、せんべいなどを投げてくれるのである。おいと呼ばれて、皆の眼の中で、それを貰って喰べるのが、ぼくにとっては辛かった。自分のひがみだが、自分の姿が犬コロに見えた。

帰るのも、皆よりは毎日三十分ほど遅く帰った。掃除をし、火の用心を見、戸締まりして帰るのが役だった。ところが、女工員三名のうち二人までは、主任の細君と、文選にいる工員の妻らしかったが、もうひとりのお勢ちゃんという三十ぢかい独り身の年増は、白痴美といったようなぽってり顔で、仕事中でも厚化粧の小鼻や髪の毛ばかり気にしているといった風な人だったが、このお勢ちゃんと次郎さんとが、時々、用もないのに後に残っては、ぼくに下へ行っていろとか、二十分たったら帰って来いとか、いわれなく、ぼくを追っ払うのであった。