Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
その気持ちは、母やぼくにも、分らないではなかった。
父自身も又、そんな憐れな宿命の子を、叱ったり打ったりなどした後は、さめざめと、自分が嫌厭される容子だった。慚愧にたえない姿をして、枕に額を押しあてた儘、息ぎれのやむまで、俯伏していた。そして、吐血後の胃潰瘍の症状は、この前後から、また目立って悪くなった。ただの病色だけでなく、父の顔には、極度な神経衰弱だろうか、狂相に似たものがあった。
ぼくは、その頃のわが家と、毎日の事を、今、思い出そうと努めているが、誇張でなく、また肉親だからでもなく、ぼくは心から、ぼくの母を偉かったと思わずにいられない。母は、その畸形な子へも、ぼくらにする愛情と少しも変らない慈愛の姿で、哺育の肌やら丹精の手を尽していた。時には、ぼく達がひがまれる程、可愛がった。父が癇癪を起すと、いつも身を以ってその子を庇うのは母であった。
正直、ぼくらにしてさえ、義兄の無責任を、その子へ問うように、つい厄介者としたり、憎しみを向けたりした。けれどぼくの母には、まったくそれが見えなかった。近所の人はみな、母のほんとの子だと信じていた。その子は、やがて数年後に病死したが、まだまだ貧乏の最中だったので、葬式もしてやれなかった。