Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
あきらかに、それは古川氏の邸宅へ行商に行った日が境で、また廃めた動機でもあった。けれどそのことは父母には話さなかった。だから両親は急にぼくの容子が違って来たのを理解出来なかったことだろう。こんなばあい、厳格すぎる男親の下にある少年は、心のものを率直に現わしえないで、それを妙なじぶくり顔や別な恰好に出して、幾日も無口になったりするのであった。病床の父は、単に懶惰な子の不良性と見てか、時折、苛々している容子だった。
廃めてから一週間程たって、行商売子の問屋から「預かっておいた保証金を返すから取りに来い」という通知が来た。行ってみると、十円入れた保証金なのに、六円幾らしか返してくれない。行商箱の損料とか、雨具や店舗使用料だのと、いろんな名目で差引勘定がされている。ひどく不当に思われたが、大人でさえこの手に泣き寝入りを見せられていたのだろう。是非なく、渡されただけを持って帰り、母と一しょに、さっそく小島の小母さんへそれを返済に行った。
男気な小母さんは、母が詫びて「不足分はいつかお返しいたしますから」というのを打消して「いいよ、いいよ。世間はお互い持ちじゃないの。