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Japanische Klassiker mit Furigana

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わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme

Aozora Bunko

船具部の仲間は、その日全員で、一号ドックに入渠中の一万噸ちかい欧州航路信濃丸の外装塗工にあたっていた。

船腹上部の黒ペン塗りが終り、吃水線部のオートライまで吊り足場を下げて、船首から艫へわたる数十組の足場足場の工員は、熟練した動作で、レッド・ペン缶を片手に、迅速な仕事を争っていたのである。

午後の三時半か四時頃であったろうか。巨大な船腹は塗りたての赤い液と西日にギラついていた。だが、ドックの底は、もうほの暗く、所々に薄氷が光って見える。当然、夜業になるらしかった。

足場は、尺板二枚を並べただけの物にすぎない。両端を枕木で締め、ロップ車が附いている。そのロップは、船の上甲板に結い附けてある、も一つの車を通って、ドックの宙から陸へと長く渡してあるのだった。陸の杭は、文字どおりの命の綱の根本なので、頑丈にできている。高さ三尺ほどで頭の丸い、鉄製の太い杭だ。ドックではそれをミットとよんでいた。

ミットの頭には、鉄の笄が横に出ている。足場綱をゆるめて、船腹の足場を下げるさいに、過って、ロップが外れない為にである。ところが、その日は、手不足であったのか、陸のミット番に、船具部以外の人まで狩り出されていた。